わたしが小説を書くように
あこがれ
 先生との出会いは、小学五年生のとき、本の中でだった。

 もうそのころ父は家を出ていた。大量の本と家具だけを置いて。

 わたしは父の書斎に立ち入り、本を読むのを日課にしていた。

 母は本も処分したいようだったが、なにせ手間がかかる。
 
 ひとがうちの中に入ってくるのを好まない母に、わたしは、
「本はわたしが読むから、まかせておいてほしい」
 と告げた。

 父の本棚には、仕事の本だけでなく、古今東西の文学書がたくさん並んでいた。
 なぜだか少女マンガやライトノベルまであったと思う。

 わたしはそれらを、文字通りかたっぱしから読んでいった。

 理解できない言葉がたくさんある、難しい本ばかりだった。
 諦めず、ひとつひとつ辞書を引き、語句の使い方を覚えた。

 放課後はまっすぐ帰り、父のリクライニングチェアをぎっこんばったんしながら、本を読んだ。

 そんななかに、先生の本はあった。


 
< 4 / 59 >

この作品をシェア

pagetop