スノーフレークス
「私たちカップルが結婚を考えていたことを知ると、お義母さんは『このお嬢さんは病弱だから結婚したら苦労するよ』って予言したじゃない。私、あの時からあまり丈夫ではなかったけど、お義母さんにはまだ私のことは何も話していなかったわ。それなのに彼女は私のことをお見通しだったのよ」
「そんなこともあったね」
 父さんが渋い声で返す。
「残念ながらお義母さんの予言は当たりだったわ。私ときたらあれからますますひ弱になってしまって、家事を葵に任せているし、あなたにも色々と面倒をかけているし」
「利栄子。そんなことは言わないでくれ。第一、君がいなけりゃ、葵はこの世に生まれてこなかったんだぞ」
 父さんが母さんを慰める。
「そうよ。私、結構今の生活を楽しんでいるのよ。友達にも料理が作れるのを尊敬されているんだから」
 私は父さんの後押しをする。
「皆には迷惑かけているけど私は幸せよ。こんなにいい家族を持って」
 母さんは湯呑みにお茶を注ぎながらしみじみ語る。

 今、母さんは十九年前のことを思い出している。あの時、おばあちゃんは若い二人に南国料理と泡盛をふるまったけど、実のところ、母さんは招かれざる客だったのかもしれない。
 これまで、あまり沖縄の家に帰省しないのはひとえに母さんの体調のせいかと思っていたけど、それだけじゃないかもしれない。おばあちゃんが病弱な母さんを嫁としてあまり良く思っていないから、私たちはお互いに距離を置くようになってしまったのかもしれない。故郷を離れて働く父さんには、彼を支えられるような丈夫な奥さんがふさわしいとおばあちゃんは思っていたのだろう。
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