【短編】とある悪い日の話
わるいひ




「篠田くんさぁ、困るんだよね」




その日は朝からとにかくついてなかったように思う。




「先輩の君がしっかりしてればこんなミスは起こらないと思うんだよねぇ僕は」




まず、寝坊。




大慌てで作ったお弁当をそのまま忘れて家を出る。




「大体篠田くんは言葉足らずっていうか」





取りに戻る時間もなく、そのまま全力疾走でなんとかいつもの電車に乗り込むも、小太りなおじ様たちの間にサンドイッチ。




「いつも不機嫌そうな顔してるじゃない?だから後輩も質問し辛そうだし」




電車を降りて何とかおじ様たちから解放されたと思ったら定期が昨日で切れていて、更新を余儀なくされる。そしてまた会社までハイヒールの踵を削りながら全力疾走。




「だからもっと愛想良く…って聞いてる?」




「え、あぁ。すみません」




そしてなんとか会社につけば、席につく前に部長に呼び出されて長ったらしい説教。




朝の不幸を思い返しながら部長の話を右から左へ受け流していることがバレたのか、むっと眉間にシワを寄せたカサカサの額を見つめてとりあえず謝っておく、私。




篠田都和(しのだ とわ)




この大手企業のオフィスでパソコンのキーボードを叩くこと早数年。




入社当時は一番下っ端で先輩方にもそこそこ可愛がられていたというのに、気付けば今では自分のミスじゃないことで怒られるような、そんな立場になってしまった。





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