眠り姫の憂鬱
思い出せない王子。
病院を出ると、黒塗りの車が待っていた。

運転手さんがドアを開けながら
「寺田と申します。将吾さんがお留守の間、お手伝いさせていただきます。」と言ってくれる。

50代くらいの背筋の伸びた角ばった感じの体はいかにもボディーガードも兼ねている感じだろうか?

「家にいるのは寺田さんとお手伝いさんをしてくれている奥さんの涼子さんと庭師の横山さん。寺田さんご夫婦は離れに住んでいるし、庭師の横山さんは毎日通ってくれて力仕事や壊れた物の修理もしてくれる。
どの人も実家にいたベテランだから、家のことは任せて、美月はのんびりすればいい。」
とショウゴさんは私に笑いかける。

運転手さんにお手伝いさんに庭師さんがいる。

これから住むのは一軒家って事ですよね。



車は滑るように走り、ショウゴさんのご実家のある住宅街に入っていく。

周りは大きな門がある個性的な家が並んでいる。

一際高い塀が巡らされた敷地の門の前で車が止まると、門が音を立てて開いていく。

『竹之内』の重厚な表札。
ショウゴさんが育った家。

中に入ると、まだ、道が続き、大きな日本家屋が見えている。

玄関の前にはお手伝いさんらしき人とスーツの男性が2人待っていた。

スーツ姿の人のひとりは将吾さんといつも一緒にいる秘書の遠藤さんだ。

「美月、そんなに緊張しなくっても大丈夫だよ。挨拶だけだよ。すぐ終わる。」

とショウゴさんが手を握ってくれるけど緊張しないわけにはいかないでしょ。







< 15 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop