HARUKA~愛~
第2章 高3の夏 存在意義 
時間はあっという間に過ぎてしまうものだ。


気がつけば、影が3つ出来ている。

真ん中がくぼんで、まるで山が2つ連なっているように見える。


「俺たちの青春は終わったな~」


「ホント、あっという間だったよなあ…。最後はぼろ負けで引退。なんか、あっけなかった」


私達は地区大会で準優勝したものの、次の大会には駒を進めることが出来ずに部活を引退した。

引退試合の時、遥奏と宙太くんは抱き合って泣いていた。

3年間汗水流したコートとの別れは、多分私の想像以上に身に応えることだったのだろう。

だけど、色々な苦労や葛藤で色づけられたコートに後悔の文字はきっと無い。
彼らが青春を捧げたコートに暗い影はなかったから。


「まあでも、次は修学旅行がある!!遂に俺もLAだぜ、LA!!チョー楽しみだわ~」

「ロスにニューヨーク、カルフォニアのディズニーランド!!今から楽しみ過ぎて眠れねえ」


2人のテンションが夏の訪れと共に上昇しているが、修学旅行に行けない私は何も言うことが出来ず、ただ、太陽に照らされ、焦げて行くアスファルトを見つめているしかなかった。


生ぬるい風が肌をすり抜ける。

2人の笑い声が、近いはずなのに、遠くから聞こえてくるような気がした。


私は、本当に2人の間にいるのだろうか。

置いてけぼりになってはいないだろうか。


1年かけて近づいたキョリが次第に遠ざかっている。
悲しくも、そう思ってしまった。


「ハル、ディズニーランドで何に乗る?」


遥奏の太陽のような明るくて純粋な笑顔が私の瞳に映る。

私は無理やり、口角を引き上げた。


「ジェットコースターが良いかな…」






この時私は、修学旅行に行けない、正当な理由を考えていた。
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