プレシャス~社長と偽りの蜜月~
「俺は心配していたんだよ・・・」

「別に貴方に心配される憶えはない」

歳は5歳違いで今年30歳。
母方の従兄弟は5人居るけど、父方の従兄弟は樹彦唯一人。
互いに異性同士だし、仲は良くなかったと思う。


「朱音も少し記憶喪失になって変わったね。まるで別人みたいに萎らしくなって・・・社長の躾の賜物??」

「雅人に躾けられてなんかないわ!」

声を大にして言い返す。

「だって、俺に知る朱音はもっと気が強かった・・・」

私の知らない私を知る樹彦。

「お母様もそう言うわ。以前の私は気が強くてわがままだったと」

「わがままだったな・・・」

樹彦は同調するとまたコーヒーを啜る。


「会社同士の吸収に伴った政略結婚。社長との結婚も断固拒否っていたな・・・」


「私達は愛し合って結婚したんじゃないの?」

「愛し合う?」

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