「だからさ、瑠衣は俺と結婚すればいいんだって。それで丸く収まるだろ?俺みたいないい男が、お前みたいなチンチクリンをもらってやると言ってるんだぞ?喜べよ」

目の前の男は、私の話を散々聞いたあと、そう言って缶ビールをググッと飲んだ。
なにも、私が彼に話を聞いてもらいたかったわけではない。泣きながら帰った私は、すでに部屋にいた彼に、なにがあったのかを話さないと酷い目に遭わせると脅されたのだ。
彼はこの部屋の主である私よりも寛いだ様子で、 私のお気に入りのクッションに寄りかかっている。

ラスト一本しかなかったビールを、勝手に冷蔵庫から取り出し、なんの躊躇いもなく飲み干す。いつもそうだ。私に対する気遣いなど、皆無なのだ。

「海斗と結婚なんて、絶対に嫌。あなたが私を好きならば考えるけど」

タオルで涙を拭い、睨みながら言う。

「はははっ。俺がお前を好き?冗談言うな。好きとかそんな気持ちは通り越してる。今さら俺たちには必要のない感情だ。だいたい、お前に断る権利なんて、初めからないぞ。俺は昭恵さんに、お前と結婚してやってくれと頼まれてるんだから」

「なんでよ。勝手に決めないでと言ってるのにー。お母さん!どうしてなのー。海斗と結婚なんて嫌だって、ずっと言ってきたのに!」

「照れるなって。どうせお前みたいなやつは、相手なんて選べないんだから。ありがたく受けておけよ。可哀想だから、俺が犠牲になってやるよ」

再び泣けてくる。昭恵さんとは、私の母のことだ。どうしてこんな話になっているのだろう。再びタオルに顔を埋めた。
色んな感情が交差して、私は狼狽していた。
いっそこのまま海斗の言う通りに、海斗の申し出を受けたらいいのではないかとまで考える。そしたら、振られた悲しみをリセットできるのかも。