出社して席に着くと、思わず大きな欠伸がでる。
昨夜は遅くまで海斗と言い合っていたから、今になって眠気がでてきた。

「有森。なんだ、夜遊びか?」

私の向かいに座る、先輩である山内さんがからかうように言う。

「違いますよ。知人を泊めたので、寝るのが遅くなったんです」

私が答えると、彼は顔を上げて私を見た。

「お?それってまさか、噂のイケメン彼氏か?お前を迎えに来てるのを見たってやつが、何人もいるぞ」
「彼氏じゃありません。幼なじみです。付き合ってなんかいません」

私と海斗の関係を、誤解している人は多い。面倒に思いながらも、いつも決まった答えを言う。

「そうなのか?じゃあ付き合ってもらえばいいじゃないか。月島住建に勤めるエリートなんだろ」
「どうして山内さんがそんなことまで知ってるんですか」

「ああ、それな。確か、総務の駒井の彼氏が、同じところに勤めているらしくてな。有森の彼氏がすごく有能で、人当たりもいい完璧人間だとか言ってたらしいぞ。すごいじゃん、お前。そんな男を射止めるなんてさ」

もう、答えるのも面倒になってくる。
海斗の話をされると、内容はいつもこうだ。
彼の演じるキャラが完璧すぎて、私が彼の本性を話しても誰も信じない。