愛され婚～契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます～

ルールその三・諦めてはいけない！

恋心と圧力の狭間

奏多さんに肩を抱かれ部屋へと戻った。

「大丈夫？寒くない？」

特別な想いを抱くことはなく、これまでと変わらず偽りの関係でいようと言われたけれど、それでもやはり彼は私を優しく扱う。
私をソファにそっと座らせると、心配そうな眼差しで私を見つめた。

「うん。これ、ありがとう」

借りていた上着を脱いで差し出すと、彼はそれを受け取り、にっこりと笑った。

上着を羽織っていると、彼の香りを全身に感じ、まるで抱きしめられているようだった。
それを伝えようと思ったが、迷惑だと思われてしまうと思いやめた。

彼は腕時計に目をやり尋ねる。

「今夜はどうする？帰るならば送るけど」

部屋の時計の針は二十一時を指している。

「じゃあ……そうしようかな。会社に戻らないと」
「ああ、服か。そうだったね」

あっさりと言うと、彼はドアのほうへと身体の向きを変えた。

「俺は廊下に出てるから、制服に着替えたらいい。終わったら声をかけて」

そう言い残し、彼は部屋を出ていった。