愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
彼は笑顔を崩さないままで、私に向かって手を伸ばし、その手のひらで私の頬をそっと包んだ。

「そんなふうに言わないで。君を選んだのは俺だ。最後まで大切にすると言ったのは嘘じゃない。こうして触れることができるのも……今は俺だけだから」

羽で撫でるような優しいキスが、私の唇に落ちてくる。

私はそっと目を閉じて、奏多さんを感じた。

好きにならないでほしいという彼との約束は、果たして最後まで守ることができるのだろうか。

彼との関係が終わる瞬間に、私はなにを思うのだろう。

ただ、今はこうしてあなたを感じていたい。
初めて味わう男性の温もりに、私はいとも容易く溺れかけていた。

「かな……た……」

手を伸ばして彼の背中にしがみつく。

たったの一時間で私の心を奪いかけている彼は、史上最強の恋人だ。
すべての面において、彼以上の人なんてどこにもいないのだと思わせるほどに、そのすべてが甘くて優しいのだから。



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