実際に俺が洸を呼び出したのは、それからおよそ、3週間が経った頃だった。
本当はもう少し早くしたかったのだが、生憎スケジュールに空きがなかった。

場所と時間を一方的に送りつけただけのラインは、一応既読にはなっていたが、返事らしきものはない。

来るかもしれない、来ないかも知れない。

どちらでもいい。
そのスリルを楽しめるくらい、その日の俺には余裕があった。

きっかり3分遅れて、洸は待ち合せの場所にやって来た。

「ゴメン、ちょっと道に迷っちゃって」

大きく頭を下げて謝罪した彼女の足下では、流行の柄のワンピースの裾が揺れている。

「…嘘だな」
ビクッと肩を揺らす彼女。

やれやれだ。
ばつが悪そうにモジモジしている彼女に、軽くネタばらしする。

「さっきから、向こうの陰でずっとこっち見てたヤツ。今のあんたと同じワンピースに、同じ靴合わせてたぜ」

「う、ウソ…見られてたんだ。
……だって、半分冗談だと…思ってたから」
「だからラインも返さなかった?」

責める口調に、彼女はしゅんと項垂れる。

「…あれから大分経ってるし、きっともう忘れられてるって思ってたから。
メールだって、前置きも何もないんだもの。
場所と時間と…それから、あれは何?
“今までで一番可愛くしてこい” ?
私てっきり、誰かと勘違いしてるんじゃないかと」