人間複製機
溶けはじめる
それから数十分後、陸人はまだナオの話を続けていた。


気まずくなりたくないあたしは陸人に相槌をうつが、だんだん面倒になってきていた。


陸人はナオの事を本当によく見ているようで、あたしの知らないナオの話までしてくれた。


「ねぇ、いい加減ナオの話はやめない?」


1時間以上経過したところであたしはそう言った。


陸人を複製してからもうすぐ2時間が経とうとしているのに、陸人はナオの話ばかりだ。


自分にしてはよく我慢して話を聞いた方だと思う。


けれど陸人は瞬きをして「なんで?」と、聞いてくる。


陸人の鈍感さまでそのまま複製されているようで、あたしはため息をはきだした。


このままじゃいくら陸人と複製したって意味がない。


あたしは、あたしだけを見てくれる陸人が欲しいんだから、


そう思った時だった。


陸人の体に異変が起こった。


調子よく話していたはずなのに、途端にロレツが回らなくなりはじめたのだ。
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