人間複製機
欲しい物を欲しいだけ
隙を見て盗むつもりでいたけれど、こんなことになってしまうなんて思っていなかった。


自室へ入ったあたしは大きく深呼吸を繰り返した。


弘樹の頭から血が流れている映像が何度も蘇って来る。


「大丈夫。弘樹は死んでなんかない」


自分自身にそう言い聞かせて、蘇映像を無理やりかき消した。


たったあれだけで死ぬわけがない。


呼吸だってしていた。


きっと大丈夫。


大丈夫。


そう言い聞かせて見ても、体の震えは止まらなかった。


人に血を流させるほど攻撃したのは、初めての経験だった。


弘樹に怒鳴られた時、頭の中が真っ白になった。


気が付けばあたしは複製機を振り上げていて、それに気が付いたのに自分の行動を止めることができなかったのだ。
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