愛しのエマ【完】
身代わり女の恋


「奈緒さんは、事務服が好きなんですか?」

ふと副社長に言われて
パソコンを動かす手を休める私。

本日の予定は珍しく
午前中の会議のみ。

お昼も終わって
副社長は書類を山にしてデスクワーク。
私も副社長室でもできる
総務の単純仕事をパソコンで打ち込んでいた。

「秘書の皆さんは私服だから、奈緒さんも私服でいいですよ」

「ありがとうございます」
ニッコリ笑って答えるけれど
制服でいいのです。

総務部女子だけに与えられる特権
それは制服。
ここに入れて
どれだけ助かっているのか私。

ブラウスだけに気を使えばいいだけ。
他の同僚たちは文句を言い
そろそろ総務も私服に変わる噂があるけれど
ずーっとずっと私が退職するまで制服であれ!
制服バンザイ!

「私服の方が楽でしょう」

「いえ、いいのです」

「似合いそうなブランドを見つけたのです」

「はい?」

「天気もいいし、外でお茶しましょう。おでかけしましょう」

副社長は急に明るい表情になり
私のデスクに来てイスを引く。

「勤務中です」

「僕の専属秘書でしょう?行きましょう」

楽しそうに副社長は私の手を引っ張り
グイグイと廊下を進む。







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