愛しのエマ【完】
来日


次の日

「おはよう奈緒さん」

いつも通りの副社長だった。

「おはようございます」

いつも通りだけれど
距離が遠くなる
こんなに近くに居るのに
彼が遠い。

「今日のお弁当は何ですか?」

「お昼までのお楽しみです」

「ブラウス届きました?」

「はい届きました。ありがとうございます。レザーバッグも入ってましたよ」

「おまけです」

「おまけの方が高いでしょう」

昨日お店から届いた高価なブラウス。
それと一緒に
高そうなブランドバッグも入ってた
私が憧れた目で手にしていたのを
副社長は見逃さない。

「今日は着てないんですか?」

「もったいなくて」

「着ないと意味ないでしょう」

本当は箱から出してもいない
ただ
私は昨日の夜は泣いていた。

いただいた服とバッグを前にして
ただ泣いていた。

さりげなく普通通りにしてくれてるけど
腫れて赤い目はバレバレだろう。

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