アウト*サイダー

* 吐露する心



 閉め切られた窓によって逃げ場をなくした湿気たちが、目に見えそうなくらいモヤモヤした空気が漂う廊下。ケイとリョウスケが歩く後ろを、私は黙ってついていく。

「そういや、ケイって何のバイトしてるんだっけ?」

 リョウスケが、口を結んだゴミ袋をぶらぶらと揺らしながら問いかけた。

「引っ越し屋と倉庫の仕分け作業だけど」

 一切、リョウスケを見ることなく返事をするケイの声に抑揚がない。けれど、リョウスケはそれを気にする素振りもなく、驚いたように目を見開いた。

「掛け持ちしてるのか!? ……すごいな。そ、それでさ、俺もバイトしたくて。でも初めてで……知ってる奴がいた方が気が楽だし、だから……俺も……」

「やめとけば? お前には向かないよ」

 いつもの如く、彼の冷たい眼差しに見下ろされたリョウスケの沈痛な面持ち。その目の端にはキラリと光るものが……。

「力仕事とか、同じ作業の繰り返しはリョウスケには続かないだろ」

 さりげなくフォローしてくれたようなケイの言葉一つで、たちまちリョウスケの機嫌がなおる。

「うーん……それじゃあ、やっぱ接客かなぁ? ファミレスとか、コンビニとか?」

「どれでも良いんじゃない?」

「こういう時は“どれでも”じゃなくて“どれも”だろ!」

 返事代わりのため息に、リョウスケから際限のない小言が続く。
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