悪魔の囁きは溺愛の始まり

勃発

次の日も蒼大さんと同じ時間、同じ場所で待ち合わせをした。

泊まる為に大きめの鞄を手に持ち、いつもの待ち合わせ場所で立っていた。


「青山?」

「渡部さん、お疲れさまです。」


会社から出てきた渡部さんに声を掛けられ、じっと私の持つ鞄を見ている。


「旅行?」

「あっ、いえ、知り合いの家にお邪魔するので。」

「知り合いって………男?」

「えっ?」


渡部さんが真剣な表情を見せる。


「彼氏?」

「えっ?あっ、はい。」


正直に答えた。

彼氏だよね?

『彼女になれ』って事は私には彼氏だよね?


「青山、前に聞いた時は『傷つけた人を忘れられなくて前に進めない』って言わなかった?」

「はい。」

「何でもう彼氏がいる訳?」


怒った口調で責められ、なんて答えれば良いのか戸惑ってしまう。


「『前に踏み出せたら俺の事を考えてみて。』って言ったの忘れた?」

「………。」


目の前にまで近づいてきた渡部さんに体を強張らせた。
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