次期王の行方 ~真面目文官は押しに弱い?~
クーデノムの部屋②
「ほんともう当てずっぽうだな。俺の所にも『貴方が王子ですか?』と何人か来たぞ」
 期間終了まで後十日という切羽詰った状態。
 相変わらずクーデノムとマキセは我関せずと雑談していた。
「私の所にも来ましたよ」
「お前のとこにもか」
「えぇ、でも内容は『誰を王に選ぶつもりですか?』と」
「もう諦めたか、次期王に取り入るための算段かな?」
「そうですね…考えてみたら臣の方って、王の子を探すより私に意中の者を選ばせる方が楽なんじゃないですか?」
「でも、やっぱりこの国に生まれた勝負師の血が騒ぐんだろうよ」
「皆さん素直ですね」
 くすくすくすとクーデノムは楽しそうに笑う。
「王になりたくないんだから、真正面から『王のご子息ですか』と言われて『はい』と返事する訳ないだろうになぁ」
「でもその人もクスイ気質の血を継いでるのですから、それは素直に認めはすると思いますよ。説得は難しいだろうですけどね」
 果実酒を二人で一本空けてほろ酔い気分。
 北陸のリサニル産高級果実酒の酔いは穏やかでついつい飲みすぎてしまう。
「マキセは探さないんですか」
「知らないヤツを王にして側にいるのもなぁ……」
 不意に真剣な表情でクーデノムがマキセに問う。
「マキセ…王になる気はないですか?」
「あははははは……ないよ。俺なんかじゃ務まらんだろ」
「そうですか? 誰に対しても物怖じしない態度は向いてると思いますけどね」
「クーデノムこそ」
「え?」
「王の子を説得出来なければお前が選ぶ。誰もが王や側近になれる可能性があるが、クーデノムが王になれないじゃないか」
「私にその気がないから別にいいんですよ。今のままで充分です。それに現状の様子だと側近になる可能性は高い」
 複雑な苦笑いを浮かべる。
「そうだけどな…クーデノムが王の子なら説得して側近になるのもいいかも知れないんだが」
「…その言葉、そのままお返ししますよ」

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