気高き国王の過保護な愛執
第四章

うたかたの友



『あなたが王になるときが来たら、私はいつでもそばに控え、あなたのために暗躍する栄誉をいただきたいですね』


茶色の巻き毛の友人とは、騎士団の同期だった。

クラウスは伯爵家の三男で、後継ぎである長兄以外は家に不要と追い出され、騎士見習いとして入団した。ディーターは十一歳、クラウスは十三歳だった。


『おれは王にはならない。兄上がいる』

『ディーターのほうが器ですよ』


人が聞いていないと思って、ぎょっとするようなことを言う。


『不敬だぞ』

『相対的な話です。私の中で、あなたへの尊敬のほうが勝っているというだけだ』


ディーターが十七歳になり、王家の子息の義務である騎士団での生活に終わりが見えた頃の会話だ。

手を油で汚しながら、大量の馬具の手入れをしていた。鐙の金具をひとつひとつ外し、すり減ったものや歪んだものは鍛冶工房に持っていき、修理を依頼しなければならない。

王子といえど、見習い中は見習いとして、先輩騎士たちにこき使われる。卒団すれば、彼らはディーターを見かけても、敬礼しかしないだろう。


『忘れないでください、約束ですよ』


クラウスは美しく微笑んだ。


『あなたが王になったらね』




「陛下!」


はっとルビオは覚醒した。

ぐらりと身体がかしぎ、自分が馬上にいることを思い出す。

馬の後足が、踏ん張る場所を求めて懸命に泥を蹴っているのがわかった。ルビオの荷重移動が遅れたせいで、バランスを崩しかけている。

天を仰いだ馬の轡を、ゲーアハルト卿が掴み、力いっぱい引っ張った。大臣の見事な重種馬は、ルビオの馬の重量をものともせず、足場の悪い傾斜をじり、じり、と確実に登る。
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