気高き国王の過保護な愛執
フレデリカはその場で膝を折った。


「お目にかかれて光栄です。フレデリカと申します」


草花に落ちる、王女の影が動いた。ちょいちょいと、可憐な仕草で手招きをしている。

努力が報われたのだ! フレデリカは姿勢を正し、一歩踏み出した。

しかし彼女の靴が踏んだのは、地面ではなく、穴を覆った草だった。




「あの、プーカ…!」


くじいた足から、おそるおそる靴を引き抜く。これから恐ろしいほど腫れてくるだろう。人目につかない城壁の陰に腰を下ろし、フレデリカは腹立ちまぎれに靴を投げ捨てた。


「プーカってなんだい?」

「いたずら妖精って意味よ」


反射的に返事をしてから、首をめぐらせた。声の主はすぐうしろに立っていた。


「ルビオ!」


つい呼んでしまい、はっとあたりを見回す。ルビオは安心させるように笑った。


「このへんはめったに人が来ない。ぼくはそういう場所をいくつか見つけてあって、休みたいときに使う」

「意外と会えるものなのね、うれしいわ」

「ぼくはけっこう城内をうろうろしてるからね。けがしたの? ちゃんと診てもらったほうがいいよ」

「大ごとにしたくないの」


隣に腰を下ろしたルビオに、しっと人差し指を立てた。おそらく王女はただのいたずらのつもりで、悪気はなかった。医者にかかるほどのけがをさせたと知ったら、気に病むだろう。


「というわけで誰にも言わないで」

「わかった」

「王様がこんなところでぶらぶらしていていいの?」

「妹姫のガヴァネスに、教育の進捗を確認しているところだ。なにが悪い?」
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