気高き国王の過保護な愛執
フレデリカに褒めてもらい、ルビオは面映い気分になった。はにかむルビオを見つめていたフレデリカが、ふと尋ねる。


「ねえ、ルビオって何歳?」


唐突な質問に面食らいながらも、ルビオは答えた。


「二十三らしいよ」

「私より四つも上なのね!」

「え! リッカってまだ十九なの!?」


じっとりとした目つきをもらい、失言だったと気づく。


「老けて見えてたかしら、ごめんなさいね」

「いや、違うよ、落ち着いてて、しっかりしてるなって。博識だし…」


たいして変わらないが、ちょうどはたちくらいかと思っていた。それから、ちょっと待てよと気づく。


「ぼくをいくつだと思ってたんだ」

「はたちくらいかと」

「そんなに若く見えたかな、ごめんね」

「気にすることないわ。記憶と経験が人に人生を刻むんだもの。どちらもないあなたが、つるつるの赤ちゃんみたいに見えても当然よ」


皮肉を言ったつもりが、さらに上手の嫌味で返される。


「言っておくけど、習得した技能とか、そういうものまで忘れたわけじゃないんだぜ」

「編み物の腕でも見せてくれるの?」


取り合ってもらえなかった。

イレーネが頬杖をついて、「兄さまかっこ悪い」とにたにたしている。

ルビオはむくれ、こんな態度が許される、この三人の時間に安らいだ。




「陛下、共和国より要請です。国境での紛争に兵を貸せと」

「聞いている。大げさに言ってきているが、民族間の小競り合いだろう?」


自室に戻る途中、ゲーアハルト卿がどこからか現れ、半歩後ろを歩きながら伝えてきた。王城内でも自分より視線の低い人間にあまり会わないルビオだが、この大臣だけは、頭の上から声が降ってくる気がする。

それは、卿の人並み外れて立派な体躯のせいだけではないように思えた。
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