気高き国王の過保護な愛執

いったい誰なの


青空の広がる暖かな日。

土が程よく湿っているのを確認し、芽吹かせたハーブの苗を植え付ける。

寒季の間、大切に保管しておいた種から育てた苗だ。順調に育てば、葉、花、茎、種、根、と時期に合わせてさまざまに収穫でき、貴重な収入源になる。


「リッカ、終わったよ」


泥だらけになったルビオが、鍬を右手にぶら下げてやってきた。

麻の上下に羊の毛で織ったチュニックを着ている。オットーからの借り物なので、だいぶ幅が余っており、余分な部分を腰の革ベルトでくくっている。

おかげでかえって、すらりとした長身と引き締まった体躯が引き立ち、ただの日常着が、まるで特別に仕立てた衣装のように見える。


「ありがとう」


フレデリカは立ち上がり、彼に耕してもらっていた畝へ行った。

ここは麦畑の片隅を区切って作った、彼女の薬草園だ。医学を修めており、求められれば村の住民に医療を施すオットーの薬にもするし、出入りの薬屋に売ったりもする。


「完璧。ここの列だけ深さを倍にしてくれる? 根の長いハーブを植えたいの」

「リッカってけが人使い荒いよね」

「ぼくにできる仕事があるなら、とか殊勝なことを言ってたのは誰よ」

「最近忘れっぽくてさ」

「くたびれたなら肩でも叩きましょうか?」


生々しい傷がようやくふさがってきたばかりのルビオは、「気を使わなくていいよ」と優雅に負け惜しみを言った。


「フレデリカ様、ごきげんよう」


あぜ道から声をかけてきた者がいた。

赤毛頭にフェルトの帽子を載せ、気のよさそうな顔をほころばせている青年だ。耕した場所を避けながら、飛び跳ねるような足取りで近づいてくる。


「ごきげんよう、リノ」

「ラ・セバーダで、オットー様から開祭の言葉をいただけますかね」

「問題ないと思うわ。伝えておく」


「助かります」と微笑んだ彼の目がルビオの姿を認め、きょとんと丸くなった。
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