元ヴァイオリン王子の御曹司と同居することになりました
3

「おはようございます。朝早くからありがとうございます」

キッチンで朝ご飯の支度をしていると、出海君が寝室から出てきた。

「おはようございます」と返した私と目が合うと、ふにゃっと笑って、洗面所へ消えていった。

……危ない。
……気を引き締めていてよかった。

寝起きで少し眠そうな完全オフの笑顔とか、
少し寝癖のついた髪の毛とか、
スウェットやジャージじゃなくてまさかの前開きパジャマとか、
素で対峙しようものなら、うっかり……、
つい、うっかりしてしまうところだった。



髪型を整えてスーツに着替えて食卓についた出海君は、すっかり爽やかビジネスマンだ。

「いただきます」と手を合わせて箸をとる仕草が美しくて、大学時代に初めて見た時にはびっくりしたことを思い出す。

なお、私はキッチンで細々と働いている。
出海君と一緒に食事をするのは畏れ多い。

「うん、お味噌汁美味しいです!」

一晩漬けておいただし昆布入りの水に、顆粒だし入れただけです。

「わあ。目玉焼きって、こんなにおいしく作れるんですね! こんなになめらかな白身、初めて食べました」

ひたすら弱火で加熱しただけです。

上品な仕草ながらも、もりもり食べて完食していただけて、ひと安心。

食後にカフェオレをお出しする。

出海君は一口すすると、ほーっと息を吐き、

「朝から幸せです。これから頑張れそうです」

と微笑んだ。

……また、心に引っかかる感覚。
だけどそれを捉えることを理性が拒否した。


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