元ヴァイオリン王子の御曹司と同居することになりました
4

出海君の家で練習すること、1ヶ月。
演奏会本番まで、あと1ヶ月。

「さすが希奈先輩、しっかり挽回してきてますね」

オケの練習終了後、楽器を片付けていると、コンマスの三神君がやってきてそう言ってくれた。
褒められて悪い気はしない。
圧迫した後、こういう目配り気配りとフォローができるのはリーダーとして素晴らしいと思う。

内心嬉しいのが顔に出てしまったんだろう、三神君が言った。

「……何かおかしいですか?」

「いいえ、素晴らしいコンマスだなと感心しておりました」

「恐れ入ります。大学時代に出海先輩の背中を見て学ばせていただきましたから。僕にとっての理想のコンマスは出海先輩です」

……出海君の名前をきいて、胸がギュッとなる。
これは顔に出ていませんように。

「ところで希奈さんは、どうやって練習時間確保できるようになったんですか?」

「……仕事が少し落ち着いてきましたので」

当たり障りない返事をする。

すると三神君はにっこり笑って、

「この間出海先輩と話しましたよ。希奈さんのお話も出ました」

と返してきた。
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