華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
9.幸せの道標
―――長い間、夢を見ていたような気がする。


……いや、夢かどうか分からない。

でも、とても不思議な体験だった。



黄色い花が咲き乱れる、花畑。

そこに亡くなったはずの母が立っている。


私の記憶の中の母は、笑顔なんてなかった。
いつも泣いているか暗い表情ばかりで、明るい母なんて見たことがないに等しい。

けれど、そこにいる母は笑っている。
とても幸せそうな表情で私を見ていた。


そして私に、『こっちに来て』と言わんばかりに手まねきをする。

あんなに明るい母を見たのは初めてだった。

嬉しくなって母の元へ行こうと足を一歩踏み出すのに、そのときに限っていつも誰かに呼ばれ、後ろを振り返る。


すると目の前が真っ暗になって、身体に痛みが走る。

苦しくて、辛くて。

でもまた気がつくと明るくなって、母がいる世界に戻っていた。

< 156 / 169 >

この作品をシェア

pagetop