華麗なる国王の囚われ花嫁~若き絶対君主の一途な愛~
5.奪われ、戸惑い、そして

その日の夜、いつものように部屋の扉がノックされたが、私は扉に鍵を掛けたまま開けようとはしなかった。

2、3回、ノックが繰り返される。
それでも開ける気配がないと気づいたのか、王子は扉の向こうから私に声をかけた。

「ソフィア、寝ているのか?」

ガチャリ、とノブを回す音が聞こえる。
しかし鍵をかけているため、扉が開くことはない。

私は息を潜ませ、王子が立ち去るのを待った。
しかし、王子は諦めない。

「……なんの真似だ、ソフィア。ここを開けろ、起きているんだろう?」

嫌よ、誰が開けるもんですか。
特に今日は王子には会いたくない。顔も見たくない。

私は意地でも返答せず、無言を貫く。


「いつも鍵などかけなかっただろう。なにがあった?」

そんなのエリスに聞いたらいいわ。

「無視をするな、ちゃんと答えろ」

だから口も聞きたくないのよ。

王子の問いに対し、私は心の中だけで返答する。
本当は声に出してぶつけてやりたかった。

でもここは我慢だ。
このまま王子が諦めていなくなってくれたほうが、今の自分にはいい。

けれど王子はしつこい。
扉の向こうから気配が消えることはなく、しまいには恐ろしいことを口にした。

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