不思議の国の恋の音
音色届ける世界
「5!4!3!…」
2、1とスタッフが指を動かし幕は上がる。
幕の裏側、まだ光の当たらない暗闇の舞台に1本の光が射すと、たちまち舞台は明るくなって歓声が上がる。

ライトアップされた舞台を照らすように、観客は手に持っていたスティック状のライトを振っていた。
そのライトは受付で販売されていた『桃色ライト』。
私、橘(たちばな)ことりのイメージカラーで統一されていた。

「みんなーっ!今日は来てくれて…ありがとーう!」
マイクを片手に大声で精一杯の感謝を伝えた。
こうやってライブに来てくれるみんなは、きっと私を応援してくれている。
それだけでとても嬉しくなる。

このステージが好きだ。
こうやって歌っていたい。
こうやって踊っていたい。
こうやって輝いていたい。

私の存在を認めてもらっているみたい。
こうでもしないと『私はいなくてもいいんじゃないか』と思い続けた“あの日”に戻ってしまう気がする。

私が輝き続けたい理由と辞めたくない理由は今、ここにある。

「それでは聞いてください…!ファーストシングルのセトリ1番!『Not alone』!」

私が産まれて初めて自分で書いて自分で作った曲。

昔から今まで繋いできてくれた曲。

さあ、歌おう…!

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