結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。
■序論■

恋人作成方法その1・お見合い


ゴールデンウイークも過ぎ、暑いくらい日差しが強くなってきた初夏の日曜日、午後二時。

開放的な気分にさせる大きな窓から、みなとみらいの青い海が見渡せる。高級ホテルの、コーヒー一杯千円もするようなこのラウンジに私が来る理由なんて、今のところひとつしかない。


「今日は、倉橋さんのことをいろいろとお伺いしてもよろしいですか?」


座り心地の良い椅子に向かい合って座っている、スーツ姿の少々ふくよかな男性が、若干緊張した笑顔で私に問いかける。

つい先ほど初めて顔を合わせたこの人、三十四歳の甘利(あまり)さんは、私のお見合い相手だ。


「えぇ、もちろんです」


普段かけている紅いフレームの眼鏡は家で眠らせ、コンタクトにした瞳で甘利さんを見つめて微笑むと、彼は嬉しそうに顔をほころばせた。

「倉橋さん、お綺麗なので緊張してしまいますね」なんて言われると、たとえお世辞でもこっちまで照れてしまう。


倉橋 綺代(くらはしきよ)、二十七歳。

人生二度目のお見合いは、滑り出しは上々。前回のような失敗は繰り返さない。

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