翌朝、午前八時五十分。

サンセリールの本社ビル二階にある研究室に出社した私は、自分のデスクのパソコン画面に映る表を、頬杖をついてぼんやりと眺めていた。


横浜駅から電車で十分ほどの場所に構えるこの本社ビルには、高級チョコレートやギフト菓子を製造する工場が併設されている。

支店は全国に五つあり、社員は全部で七百名ほど。そのうち、私が所属する商品開発研究課のメンバーは約十五人だ。

こじんまりとしたオフィスの隣に研究室がくっついており、成分の分析や、味や品質の研究を日々行っている。

おそらくチョコレート好きなら誰もが一度は耳にしたことがあるだろう、わが社の商品作りに関わっていられるのはとても光栄なこと。

それになにより、好きな仕事だから毎日楽しく働いているのだけれど……なんだか今日はやる気が出ない。

そんな私の視界の端に、セミロングの髪を揺らしてにこりと笑う女の子が入り込んできた。


「きーよーさん。おはようございます」


右側から私の顔を覗き込んで元気に挨拶してくれるのは、三歳下の後輩の、丸岡 咲子(まるおかさきこ)ちゃん。

愛嬌のあるえくぼとつぶらな瞳、少々ふっくらとしたマシュマロボディが可愛い彼女は、プライベートでも仲良くしている友達だ。