結論、保護欲高めの社長は甘い狼である。

魅惑の誘いとフェロモン放出


CT検査でも問題なく、翌日には退院できた私は、ひたすら自室のベッドの上で正座をして唸っていた。

手に持ったスマホと睨めっこをすること早一時間、時計の針はもうすぐ午後七時を示そうとしている。

こうしている理由はもちろん、泉堂社長に電話をするために葛藤しているから。

仕事の用件ではないため終業時間まで待ってみたのだけど、そうでなくても緊張してしまって手が動かせない。

でも、あんまり遅くなったら失礼だもんね。それに、向こうがはっきり『かけてください』と言ったのだから、なにも怖気づく必要はないのだ。


「これは社長命令、社長命令……」


呪文のようにぶつぶつと繰り返して言い聞かせ、決心した私は思い切って受話器のマークをトンッとタップした。

ドキドキして締まってしまう喉を開くために咳払いしながら、スマホを耳に当てる。コール音が五回ほど鳴り、それが切れたのを合図に息を吸い込んだ。


「もしも──」

『ただいま電話に出ることができません。ピーという発信音のあとに……』


……る、留守電。

よく聞く応答メッセージが流れ、私は一気に脱力した。

あぁ……どんな会話をすればいいか、頭の中で何度もシミュレーションしていたのに!

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