突然の接待から数日後、私は研究室でいつものように黙々と作業をしている。

今行っているのは、チョコレートの口当たりや風味を最も良い状態にするために大事な、テンパリングという温度操作。

乳脂肪の配合やカカオの産地によっても、適したテンパリングの温度は違ってくる。そのため、新たな商品を生み出す際には、毎回この温度をコントロールしなければならない。

しかし、小型のテンパリングマシンの温度を調節する私は、頭では別のことを考えていた。


「一番チョコに合いそうなのは、多幸感が増すセロトニンの分泌を助けてくれるいちじくよね。エンドルフィンの分泌を促進させるカプサイシンも気になるけど、唐辛子じゃさすがに合わせるのは難しそうだし……」


いまだに材料の段階から進めていない媚薬チョコレートのことでぶつぶつと呟いていると、隣でサンプルを入れるための型を用意していた咲子ちゃんが真面目な顔で言う。


「綺代さん、媚薬チョコレートに熱心になるのもいいですけど、他のことも考えたほうがよくないですか?」

「他のこと?」


マシンから咲子ちゃんに目線を移すと、わくわくした様子の彼女はぴたっと私にくっつき、耳元で囁く。