ケーキ屋の彼

「これって、渡辺くんのもあるのかな」


掲示板の前で立ち止まって、授業の変更などがないか確認しながら話す2人。


今はちょうど授業の時間で、人は少なく掲示板のところにも櫻子と柑菜しかいなかった。


「どうかしら」


「そういえば最近忙しくて、ケーキ屋にも行ってないし渡辺くんにも会ってない」


メールのやり取りはしているものの、2人とは顔を合わせることがなかった。


そろそろ試験のこの頃は、制作課題も多く、なかなか制作室から出られない。


とはいうものの、美術が好きな2人にとってそれは苦でもないのだが。


「久しぶりに秋斗さんに会いたいな……」


「今日行けばいいんじゃないかしら? 少しなら大丈夫よ」


「そうだねっ、じゃあ夕方の授業終わったら行ってみる!」


柑菜は、急に声が明るくなり表情が生き生きとしてきた。


そして、その時間が早く来ないかと待ちきれない様子だ。
< 183 / 223 >

この作品をシェア

pagetop