私はスマホを取り出し、社長に電話をかける。
3コールでつながった。
事情を説明すると、「すぐに行く」と、電話は切れた。
「すぐ来てくれるみたいです。篠宮部長、ありがとうございました。もう大丈夫です。これ以上ご迷惑おかけするワケにはいきません。お気をつけてお帰りください」
深くお辞儀する。
私の手は震えたままだ。
「いや、家族の人が来るまで、一緒に待ってやるよ。ひとりじゃ心細いだろ」
確かに心細いんだけど、いろいろ困ることもあるワケで。
どうしようか。
いろいろ思案していると、玄関のチャイムが鳴った。
えっ!もう着いたの?

「はい」
おそるおそるドアを開けると、そこには社長が立っている。
「朝海ちゃん!大丈夫!?」
あぁ~、バレたね。
篠宮部長はギョっとしている。
「あの~、叔父さん。篠宮部長がいらっしゃるんだけど」
「叔父さん!?」
そうだよね。そりゃびっくりするよね。
社内の人には内緒にしてるし、社外にも公にしてないし。
大体のことに冷静沈着に対応する部長でも、この状況はさすがに慌てるよね。

「篠宮くん?どうしてここに?」
「今日は栗原に頑張ってもらったんで、一緒に晩御飯を食べて、送ってきたところで、この騒ぎで」
篠宮部長は丁寧に事情を説明している。
「そうか、そうか」
「それより社長、どういうことですか?」
「朝海ちゃんは姪っ子なんだよ」
あ~!
さらっと言ってしまったよ。
こうなったら、篠宮部長に隠しても仕方ない。

私は一度深く深呼吸する。
意を決して、篠宮部長に説明する。
「社長は私の叔父なんです。私、両親を早くに亡くして、唯一の身内が叔父なんです。親代わりに育ててもらいました」

これが私の家族事情。
内緒にしてるのには、いろいろと迷惑がかかるから。
それと、私自身にとっても、不都合なことが起こるかもしれないから。

でもバレてしまったものは仕方ない。
篠宮部長なら、ペラペラ洩らしたりはしないだろう。
苦手な上司だけど、信頼と尊敬はしている。

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