【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜


「好き…」

やっと言えた、本音。
隠していたはずの仮面は服と同じく彼に剥がされ、無防備な素顔に、真っ直ぐな視線を注がれた。

「好きだ…忍。他の誰かじゃない、お前だけを…」

そう言って額にキスを落とされ、不意に泣きたくなった。

傍にいたい。
もっとずっと近い所で。


好きだと気付けば、止まることすら出来ない…まるで子供のような恋。

今まで、全て『決められた』レールの上を歩いて来た。

それが当たり前のことだと思って来た。


それなのに、彼と出逢い、恋をしたことで、全てが180度変わってしまった。

もう、戻れない。
あの頃の自分には…。


精一杯演じてた"いい子"になんて戻れない。
聞き分けの良いだけの、ただの女になんて…。


貴方を知らないままの自分には、もう…戻らない。


< 117 / 127 >

この作品をシェア

pagetop