【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜

「やめて欲しいか?なら、そう言えよ…じゃないと俺は図に乗るぞ…?」


耳朶を食めるくらい近くで、その熱を孕んだ耳に低く言葉を注ぎ込めば、彼女はすぐに陥落してしまった。


「か、要人さ…」

「良い子だ…」


やっと、ちゃんと名前を呼ばれて、満足する。
それと同時に彼女の髪へと触れると強引に腕の中へ引き寄せる。


「や、だ…め…」

「どうして?」

「んんん…っ」

「柔らかいな、お前の口唇は…」

「…ばか」


まるで、腕の中で紡ぐ睦言のような会話。
そんな雰囲気の中で、キスを繰り返した。


ちゅ…


強請るようなリップ音を起こして落としたきすが、灼けるくらい熱い。
それは、彼女の力を全て奪うのに、充分だったようで。

しなだれ掛かる、彼女の重みさえも愛しく感じていると、何かを訴えるような瞳が絡み合った。


「そう怒るなよ…忍…」

「…呼ばないで、そんな風に…」

「俺が、怖いか…?」


その言葉で、あの日のことを思い出して欲しかった。
けれど、それは、叶わない。

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