君を愛していいのは俺だけ
彼の居ぬ間に

 陽太くんが、韓国出張に出てしまった。
 金曜のオフィスはいつもと変わらないけれど、彼がいないというだけでなんだか寂しい。


「はぁ……」

 意識せずにため息が出る。
 自席で企画を煮詰めながらも、一方では陽太くんのことを考えてしまう。

 社内にいても必ず会えるとは限らないのだけど、絶対に会えない距離にいると思うと、二週間は長い。
 再会するまで七年も会わなかったのに、今は彼との距離をどうしたら縮められるか、彼の好きな人になるにはどうしたらいいのかを考えてばかりだ。


「ため息つくくらい、真剣に悩んでることでもあるの?」

 声を掛けられて顔を上げると、いつの間にか会議から戻った滝澤さんがいた。


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