君を愛していいのは俺だけ
その想いは本物ですか?

 金曜の夜、新宿のダイニングバー。
 今日はようやく柚と会う時間が取れた。彼女は挙式の準備や引越し、寿退社に伴う引継ぎで多忙を極めていて、夏に会ったきりだった。


「これ、お礼の印だから、受け取って」
「えっ、いいよ。気を使わないで」

 食事の注文を済ませたところで、彼女が突然小さな袋を差し出した。


「無理なお願いを聞いて、穏便にお見合いを済ませてくれたおかげで、無事入籍して旦那とも平和に暮らせてるし」
「柚、そのことなんだけど」

 半ば押し付けるように渡された袋をありがたく受け取りつつ、私は今日までのことを話した。


 お見合いの席にいた“周防さん”は、私の元彼だったこと。
 しかも、転職先のSUNRISERの社長で、今は毎日のように顔を合わせていること。

 それから色々あって、クリスマスを一緒に過ごし、近々彼の告白に返事をしなくてはいけないことも。


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