君を愛していいのは俺だけ

「明日、帰りどうしようか」
「陽太くんは、みんなと飲みに出るんでしょ?」
「多分な……でも、仁香が一緒だから、そのまま帰りたくなりそう」

 明日は、私の歓迎会を兼ねた、社長室の決起会。
 新年度が始まり、一致団結するべく酒席が設けられている。新入社員は配属されなかったから、私がその立ち位置になりそうだ。


「そんなことしたら、気付かれちゃうかもしれないよ?」

 陽太くんは、不意を突いて執務室や空いている会議室へ私を連れ込み、甘ったるく構ってくれる。
 それも、今のところ誰にも関係を気付かれていないからできること。
 明日はお酒も入るから、ちょっとした気の緩みでバレないように気を張らなくちゃ。


「……そうだけどさ。仁香といたいんだよ、俺は」

 四六時中一緒にいても、お互いにもっとずっと一緒にいたいと求めてしまう。

 こうして背中から抱きしめられているのに、どうしたら彼をひとり占めできるかを考えてしまったり……。


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