君を愛していいのは俺だけ

「明日もここに帰ってくる?」
「うん。だって金曜だし」
「じゃあ、そのままずっと帰らなくていいよ」

 ギュッと抱きしめられて息が詰まったのか、突然の提案に鼓動が跳ねたのか分からない。
 だけど、確実にドキドキと音を立てている胸の奥は、次第に彼の言葉の意味を理解して、熱を持ちはじめた。



「どうしても、ひとり暮らししたいなら別だけど、そうじゃないなら俺のところに来て」
「……陽太くんは、邪魔に思ったりしないの? ひとりになりたい時があるでしょ?」

 恋愛経験値の低い私なりに、いろいろな話だけは聞いてきた。
 お互いにずっと一緒にいたら倦怠期が早く来るとか、それすら乗り切れなくなるとか……。
 倦怠期だからって別々に過ごす時間が増えると、隣の青い芝生に手を出したくなるとか……。

 陽太くんのことはもちろん信用しているけれど、いずれ倦怠期が来るなら、別々に過ごす時間もあった方がいいのかなぁ。


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