君を愛していいのは俺だけ
佐久間は、聡明な男だ。
多くを語らなくても察してくれるし、先回りして仕事が円滑に進むよう尽力してくれる。
彼が入社してくれなかったら、今頃社内の景色が変わっていた可能性もある。
殺伐とせず、俺が理想としていた働きやすい環境を整えられているのも、彼のサポートがあってこそ。
「場所を押さえるだけで大丈夫ですか?」
「スケジュールは非公開のまま残しておいて」
「かしこまりました」
社のロゴが入った紙袋に写真と釣書をしまって執務室を出た佐久間に、仁香が声をかけてなにか尋ねている。
大好きな彼女を社長室に異動させたのは、単に俺のワガママだ。
MDにいても何ら問題はなかったけれど、自分が見ていないところで他の男性社員と仲よくしているのを放っておけなかった。