《side 仁香》


 ――夜の色を帯びてきた熱海の街並みを、温泉宿の部屋から眺める。


 年末年始は、例年なら実家で家族と過ごしていたけれど、今年は陽太くんと温泉旅行に来た。


 プロポーズを受け入れてから、数か月。
 二度目の真夏は、再会した一年前が笑い話になっていて。
 距離の取り方に悩んでいた秋も、今年は今までにないくらい近くに彼を感じられた。

 そして、クリスマスはロマンティックな時間を用意してくれていて、今回の旅行を聞かされた時は、嬉しくて楽しみで仕方なかった。



《――周防様、貸切露天のお時間でございます》
「ありがとうございます。今から行きます」

 仲居さんから丁寧に電話連絡が入って、支度していた入浴セットを手に、部屋を出た。