君を愛していいのは俺だけ

「なに照れてるの? あと数か月もすれば俺の奥さんになってくれるんでしょ?」

 思わず少し俯いて立ち止まった私の顔を、いたずらに覗き込んできた陽太くんは、にこにこと笑っている。


「ほら、行くよ」

 繋いでいた手を握り直した彼に引かれ、行燈に照らされる通路を行く。
 幻想的な雰囲気は、まるでバージンロード。
 一歩先を行く彼の背を見つめながら歩幅を合わせて歩いていると、幸せな未来へ向かっているみたい。




 宿の最上階にある屋上露天は、夜の街明かりがどこまでも広がっていてロマンティックだ。


「本当、最高だなぁ」

 先にお湯に浸かった彼は、都内よりも多い星の数に目を凝らしている。

 三人分ほど間を空けた私は、そんな彼の横顔を見つめていた。


< 419 / 431 >

この作品をシェア

pagetop