君を愛していいのは俺だけ

「お疲れ様。十時からの会議準備できてる?」

 WEBチームの女性の先輩の元を去ろうとしていたら、周防社長がフロアにやってきた。


「お疲れ様です。時間通り始められるようにしてあります」
「さすが。……で、なんで秋吉さんがいるの?」

 下階にいるはずの私に、彼が視線を投げる。
 目が合うだけでドキドキするのは、今に始まったことじゃないけれど、やっぱり慣れるはずもなくて。


「先日のお礼をしていたんです」
「あぁ、歓迎会ね」
「秋吉さんがいい飲みっぷりで、気分よく酔っていたって話をしてたんです」

 すかさず横入りしてきた先輩が、笑顔を貼り付けて彼に言った。


 いつから酔ったのか、歩けなくなるほどだった私を見て、彼はどう思ったのか……。
 知りたくないし、取り消せないことばかり。もうあんなに飲むのも、日本酒を口にするのもやめておこうと心に誓った。


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