君を愛していいのは俺だけ

「しばらく様子見たら? 立場もあって向こうもそう簡単に動けないのかもしれないし」
「動くって?」
「仁香のことを好きでいてくれたとしても、すぐには気持ちを見せてくれないってこと。それなりの長期戦を覚悟した方がいいかもね」

 長期戦なら慣れている。
 陽太くんと出会った春から、告白した冬までの期間もあった。
 それに、突然の別れからの七年間も。


「頑張りなよ。やっと再会できたんだから、納得いくまで諦めないで」
「うん。ありがとう」


 陽太くんも、今は仕事が楽しい時期かもしれない。
 三十一歳は働き盛りだし、自分が立ち上げた会社ともなれば、力の入れ方も違うだろう。



 帰宅して、ベッドに寝転がりぼんやりする。
 考えるのは陽太くんのことばかり。

 もし、今の彼が七年前と変わっていなかったら、それはそれで嬉しいけれど、私が変わったように彼だって成長したはずで。

 美歩に言われたように、長期戦を覚悟しようと思った。


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