君を愛していいのは俺だけ

 服飾専門学校の学生と一緒に、大手アパレルから業務委託されている地方の縫製工場へ見学に行く企画が、今年度の社全体の企画のひとつ。
 秋入社の私もその一端を任されていて、方々に連絡を入れて予定を詰めているところだ。


「あとは出張同行メンバーだけど、俺と佐久間は確定。墨田さんもまだ見たことないだろうから同行してくれますか?」

 社長が名指しした佐久間さんは、社長室の男性社員だ。そして墨田さんはMDの女性社員で私の一年先輩。


「あと、秋吉さんも」
「わ、私ですか!?」

 社長から直々に指名されて、声がひっくり返りそうなほど驚いてしまった。


「ダメかな?」
「かしこまりました」


 まさか、自分が出張に同行するとは思っていなかった。それも陽太くんと一緒なんて……楽しみが増えちゃったなぁ。
 思わず口角が上がってしまい、顔を伏せて表情を隠した。
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