君を愛していいのは俺だけ

 先月入社したばかりなのに、色々ありすぎた。

 そもそも、お盆明けの身代わりお見合いから、目まぐるしかったように思う。
 もし、柚が他の友人に依頼していたらと思うと、望まぬ展開も考えられるわけで……。
 例えば、陽太くんがその友達に惚れて、受け入れたかもしれないし。


「秋吉さん」
「はい!?」
「やっと気づいた」
「あ、ごめんなさい」

 向かい側の席に座っている滝澤さんは、少し呆れ顔だ。


「さっきの会議終わりから、なにか様子が変だけど」
「そんなことないですよ。真剣に仕事をしているだけです」
「出張から帰ったら、報告待ってます」
「もちろん! ちゃんと私も学んできます」

 さすがにデスクで社長のことを口にすることはないようだ。
 滝澤さんは空気を読んでくれるけど、桃子ちゃんだったらこうはいかなかったかもしれないなぁ。


< 69 / 431 >

この作品をシェア

pagetop