君を愛していいのは俺だけ
たったひと言が嬉しくて

 長崎出張が終わって一週間が経った。
 あれから私は、陽太くんの「おやすみ、仁香」の甘い声色を何度も思い返している。

 思いがけなくふたりきりの時間を作ってくれて、嬉しかった。
 なによりも彼が“仁香”と言ってくれたのがたまらなくて……。


 今日は、すっかり打ち解けた同期四人で、長崎出張の話をしつつ飲みに出ている。
 金曜だからどの店も混み合っているけれど、せっかくだからと九州の食材を扱っている店に入った。


「秋吉さん、出張から戻ってから、ちょっと明るくなったよね」
「そんなことないよ、気のせいだと思うよ」
「私も思ってた! 仁香ちゃん分かりやすいんだもん」

 滝澤さんや桃子ちゃんに言い当てられた私の心模様は、明かすわけにはいかない。


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