「エドガーを解放してもよいですか?」

「ああ。だが、セシルを襲ったうしろの男はそのままにしろ。ヤツは犯人を証言するための貴重な証人だ。連れ帰って捕虜にする」

「捕虜……ですか」

その響きに驚いたセシルは、不安に眉をひそめる。なにか酷い罰でも与えるのだろうか。

「心配するな。手荒な真似はしない。どの道、任務に失敗したこの者は国に帰っても口封じに合うだけだろう。ならば、捕虜として我々に保護されていた方がまだマシのはずだ。違うか?」

ルーファスが視線をその男に向けると、彼はルシウスとフェリクスに連れられ大人しく縄につきながら、プイと顔を背けた。
抵抗は無駄だと悟っているらしい。

フェリクスがエドガーの縄を解きその身を解放すると、逃げるように部屋を飛び出していった。

「これでもう手出しされなくなるかしら」

「安全とは言い切れんが、ひとまずは手を引くだろう。向こうも高いリスクを冒してまで他人の領地にちょっかいをかけないはずだ」

ルーファスはエドガーが逃げ去った扉の先を眺めながら、嘆息する。

「いずれにせよ――」

今度は視線をセシルに移す。驚いたセシルが首を傾げると、ルーファスは固い決意の眼差しでそれに応えた。

「奴等が何度来ようが、同じだ。必ず守り抜く」

情熱的な言葉を受けて、セシルの胸は火がついたように熱くなる。
けれど、もう恥ずかしさにうつむくようなことはしない。胸の前できゅっと両手を握りしめ、ルーファスの固い誓いを大切に受け止める。

そんなセシルの様子を見て、シャンテル、フェリクスはわずかに頬を綻ばせた。
ルシウスだけが複雑な眼差しでふたりを見つめ続けていた。