イジワル騎士団長の傲慢な求愛
「で、でも、それならどうしてあのとき、私の顔を見て驚いていたの?」

教会の祭壇で花嫁のベールをめくり上げたとき、あらわれたセシルの顔を見て、確かに彼は驚いた反応をしていたはずなのだが――

「ああ。あれは……」

ルーファスの腕がセシルの肩に回り、じゃれつくようにその体を引き寄せる。

「俺の妻になる女性が、想像していたよりもずっと美しかったから、嬉しかったんだ」

そう言ってルーファスは上機嫌でセシルの額に口づけた。
不意打ちを食らわされて、セシルの頬は真っ赤に染まる。

「……結婚をしても、耳まで真っ赤になるのは治らないんだな」

「こ、これは、ルーファス……様、が――」

「今さら取ってつけたように『様』をつけなくていい」

「――ルーファスが、急にこんなことをするから」

「妻に口づけてなにが悪い。お前は俺のものだろう?」

突然ルーファスがセシルの肩をうしろへ押し倒し、ベッドの上へと沈ませた。
覆い被さったルーファスは燭台の灯を背中に浴びながら、逆光の中、妖艶に微笑む。

「今、この瞬間を、なんと呼ぶか知っているか?」

「……え……?」

「初夜というんだ。なにをするかくらいは知っているな?」

突然の、制圧するようなキス。唇が、舌が、遠慮なくセシルの口内を掻き乱す。
真っ赤になる初心なセシルを容赦してはくれない。
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