イジワル騎士団長の傲慢な求愛
「まだはっきりとお返事は貰えていないそうだけれど。でも受けてくださるといいなぁと思うわ。だって、そうすれば私たち姉妹は結婚しても離れ離れにならなくて済むでしょう? 一生一緒の家に暮らせるのよ」

「……そうね」

嬉しい――はずだ。嫁いだ先でも大好きな姉と一緒にいられるのだから。

セシルはルシウスに嫁ぎ、シャンテルはルーファスへ嫁ぐ。年齢的にも立場的にも、適任だ。

姉はこれまでセシルを残してひとり幸せになることを嫌がって独り身を貫いてきたが、その美しさから縁談の申し込みは数知れず、引く手数多だった。

そんなシャンテルに、良家の伯爵であるルーファスは、実に相応しい。

雄々しく気高いルーファス伯爵と、その横に並ぶ麗しいシャンテル夫人――きっとお似合いのふたりになるだろう。
相手がセシルでは、きっとそうはならない。

今日は我関せずといった顔のルーファスだったが、いずれはこの姉に――シャンテルに愛を注ぐのだろうか。
それは喜ばしいことであるはずなのに、セシルの胸はざわざわと騒いで、素直に喜べない。

「ルーファス様も、ルシウス様も、申し分のない方よ。きっと私たち、幸せになれると思うわ」

「……ええ。そう思う」

はつらつと笑うシャンテルに、セシルも笑って答える。
だが、その笑顔がどことなくぎこちない。

< 67 / 146 >

この作品をシェア

pagetop